衆議院本会議(令和4年2月1日)において、「所得税法等の一部を改正する法律案」趣旨説明に対する質疑を行いましたので、その模様をWEB上でご紹介します。
所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
自由民主党の藤丸敏でございます。私は、自由民主党及び公明党を代表して、ただいま議題となりました所得税法等の一部を改正する法律案について質問をさせていただきます。
国民の皆様におかれましては、コロナ禍の中、お亡くなりになられた方にお悔やみを申し上げます。また、療養中の方にお見舞いを申し上げます。医療関係者の方々には大変感謝を申し上げます。ありがとうございます。
税は、言うまでもなく、国又は地方公共団体の統治権としての公権的課徴金であります。また、担税力に基礎を置く均等性、いわゆるアダム・スミスさんやワグナーさんからの租税原則の要請に応じ、人的、社会的事情を加味された歴史的発展の所産でもあります。
我が国の税の発祥は、氏族国家の貢ぎにあると言われております。大化の改新により唐の租庸調を導入し、江戸幕府では、地租が中心となり、明治の渋沢栄一氏も影響を与えた地租改正により、収穫高から地価に改め、明治20年の所得税の創設に至るわけであります。そして、明治憲法に租税法律主義がうたわれ、租税の賦課や徴収が整備されたわけであります。昭和15年に法人税が創設され、昭和25年のシャウプ税制改正に至るわけであります。
片や、世界の税制も、第一次世界大戦を契機として、現代税制の基盤ができ上がったと言われております。
今時の税制改正について質問に入らせていただきます。
岸田総理も、新しい資本主義を提唱され、成長と分配の好循環の実現、多様なステークホルダーに配慮した経営と賃上げを促進し、分厚い中間層をつくると言われております。
成長だけでなく分配にも注力し、持続的な成長につなげていく。分配面で重要なのが持続的な所得水準の向上です。我が国の賃金の増加ペースは、長期にわたって不十分な状況であり、他の先進国と比べてみても見劣りをしております。
その一方で、日本企業全体を見てみれば、コロナ禍の影響で業況にばらつきがあるものの、経常利益や現金保有高、内部留保は、財務省の2020年度末が484兆円。個人資産も、日銀の昨年9月末の段階で1999.8兆と高水準にあります。
成長と分配の好循環を実現するためにも、様々な政策手段を用いて企業に賃上げを促すことが重要です。その一つに、今回の賃上げ税制があると思います。
岸田総理に、その基本的な政策理念についてお聞かせ願います。
そして、鈴木財務大臣より、具体的な賃上げ税制について御説明をお願いします。
次に、予算と税収についてでありますが、令和元年度予算101.5兆、補正予算3.2兆。令和2年度予算102.7兆、一次補正25.7兆、二次補正31.9兆、三次補正15.4兆。令和3年度予算106.6兆、補正36兆。そして、今、令和4年度は107.6兆が審議をされております。
また、税収は、令和元年度58.4兆、令和2年度60.8兆、令和3年度63.9兆となっており、そして、令和4年度の税収は増収と聞いておりますが、鈴木財務大臣に、令和四年度の税収見込みをお聞かせ願えればと思います。税収も増えておりますし、GDPも本年度中にコロナ前の水準を回復することが見込まれるなど、経済指標としては悪くはありません。
次に、今回の住宅ローン控除制度見直しについて、家を建てる、住宅を購入するというのは、言うまでもなく、人生最大の買物です。若い人たちが家を買って家族のために頑張るということは、日本経済が活気づくことでもあります。今回の見直しについて、財務大臣に、御説明願います。
また、成長面では、イノベーションの促進やデジタルを活用した地方活性化が重要です。オープンイノベーション促進税制、5G導入促進税制の政策意図を含め、持続的な成長をどのように実現していくのか。萩生田経済産業大臣に、説明願います。
最後に、岸田総理の新しい資本主義で、国民の皆さんが心豊かに幸せになる。幸せは主観的にはその人の心の持ちようでありますが、政治は、幸福を享受できる客観的社会環境制度の実現を目指します。
そこで、アメリカの右肩上がりの株・金融市場は、1980年代、401kにより給料から毎月金融市場にお金が流れ込み始めます。1990年代にコンピューターが進み、個人金融市場も活発になります。2000年代になってデリバティブで取引が拡大されます。2010年代、GAFAに誘導され、買いが強い右肩上がりの金融市場ができ上がっています。
日本の金融市場も活性化できれば、あまねく人たちに、また企業に、資金循環ができると考えております。岸田総理も金融市場研究の会長もされており、日本の国が豊かになるために御一考願えれば幸いです。終わります。
〔岸田文雄総理大臣〕
藤丸敏議員にお答えいたします。
賃上げ税制についてお尋ねがありました。
成長と分配の好循環による持続可能な経済を実現する要となるのが分配戦略であり、その第一の柱は、所得の向上につながる賃上げです。
成長の果実を広く国民お一人お一人に分配することで、消費を拡大し、次の成長につなげるなど、成長と分配の好循環を実現することを政策理念として、賃上げ税制を抜本的に拡充いたします。
あわせて、公的価格の引上げ、中小企業が適正な価格転嫁を行うための環境整備など、あらゆる施策を総動員し、企業が賃上げしようと思える雰囲気を醸成してまいります。
残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。
〔鈴木俊一大臣〕
藤丸敏議員にお答えを申し上げます。
藤丸議員からは、賃上げ促進税制の具体的内容についてお尋ねがありました。
まず、大企業向け税制については、継続雇用者の給与総額を対前年度比で3%以上増加させた企業が適用対象となり、税額控除率を最大30%に引き上げることとしております。また、一定規模以上の大企業については、持続的な賃上げ等、マルチステークホルダーに配慮した経営への取組を宣言することを適用要件としております。
次に、中小企業向け税制については、全雇用者の給与総額を対前年度比で1.5%以上増加させた企業が適用対象となり、税額控除率を最大40%に引き上げることとしております。
企業においては、こうした税制措置も活用し、持続的な賃上げに取り組んでいただきたいと考えております。
次に、令和4年度の税収見込みについてお尋ねがありました。
令和4年度の税収につきましては、給与や企業の生産活動の伸び、消費の回復が見込まれていること等を反映し、65.2兆円を見込んでおります。
最後に、住宅ローン控除の見直しについてお尋ねがありました。
今回の税制改正においては、従来の消費税率8%への引上げ時における反動減対策として講じた措置を、カーボンニュートラルを実現する等の観点から見直しております。
具体的には、環境性能等が高い良質な住宅について借入限度額の上乗せを行うなどの措置を講じることとしています。
また、会計検査院の指摘を踏まえ、控除率の見直し等を行う一方、新築住宅等について控除期間を13年とする措置を講じることとしています。この結果、税額を控除し切れていなかった中間層以下の納税者にとっては、控除期間が延長されることにより、総控除額が増えるといった支援の充実につながるものと考えております。
〔萩生田光一大臣〕
藤丸議員からの質問にお答えします。
税制の政策意図や、持続的な成長を実現する方策についてお尋ねがありました。
今回の税制改正においては、大企業等とスタートアップのオープンイノベーションを促進するため、スタートアップへの出資に対して所得控除を措置するオープンイノベーション促進税制を延長、拡充するとともに、自動走行や工場等のスマート化の実現など、地域の社会課題解決に資する重要インフラである5Gネットワークを都市と地方で一体的に整備するため、5G導入促進税制を見直し、延長します。
これらの税制に加え、デジタル産業基盤の確保に向け、大胆な民間投資を促進する予算措置や2兆円のグリーンイノベーション基金など、あらゆる政策を総動員することで、デジタル、気候変動などの社会課題の解決に向けて、官民連携して投資を拡大し、成長のエンジンとすることにより、持続的な成長を実現してまいります。